愛され任務発令中!~強引副社長と溺甘オフィス~
だけどえっと……代表の話は本当なのだろうか? イマイチ信じられなくて、チラッと副社長の様子を窺った瞬間、目を疑ってしまった。

「――え、副社長……?」

思わず声を上げてしまう。だって副社長……耳を真っ赤に染めて照れていたから。

視線が釘付けになってしまったのは私だけではなく、代表に田中さん、そしてオフィスにいた社員も。

一瞬だけ静まり返ったオフィス内。その空気を打破したのは、代表の笑い声だった。


「アッハハハハッ! なんだ和幸、図星か!? これは驚いた! お前でも恥ずかしくて耳まで真っ赤にさせることができたんだな! だっ、だめだ腹が痛い。帰ったら千和に報告しないと……!」


お腹を抱えて笑い続ける代表に、副社長は拳をギュッと握りしめ、怒りからか小刻みに身体が震えている。

どっ、どうしよう。これ、どうしたらいいの?

収拾がつかない状況を救ってくれたのは、やっぱり田中さんだった。


「失礼ながら代表にそっくりですよ。よく代表も奥さまと少しでも良いことがあると、見ているこっちが目を瞑ってしまいたくなるくらい、だらしない顔をなさっていたではありませんか。喧嘩されたときは、社長室で本気で泣かれておりましたことを、私は今でも鮮明に覚えております」

「おい、田中! なんてことを言うんだお前は!!」
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