愛され任務発令中!~強引副社長と溺甘オフィス~
自分で言って苦笑いしてしまう。でも初めて呼ばれた時、ショックだった。今までずっと『菜穂美』って呼んでくれていたのに、どうしてそんな酷い呼び名を?って。


「それもふたりっきりの時だけではなくて、大学でも普通に呼ばれて。……あまりに麻生さんが頻繁に『アホ美』って呼ぶものだから、サークル内でもそう呼ばれるようになっちゃって……」


失敗するたびに『アホ美だから仕方ないか』って言われて笑われて。麻生さんにも一緒に笑われて、悲しいのに笑うことしかできなかった。


「今思うとバカだったなって思うんですけど、それでも私は麻生さんのことが好きで。なんて呼ばれようと彼の彼女でいられるなら、我慢できたんです。――でも」

今でも思い出すと、胸が痛んで仕方ない。唇をギュッと噛みしめたあと、苦いあの日のことを話していった。


「麻生さんがサークルを辞めて数日後、呼び出されてあっけらかんと言われたんです。『もう義理で付き合う必要ないよな』って。……麻生さん、サークルのみんなの前で私に告白されたものだから、断れなかったみたいで。……はっきり言われちゃいました! 『お前と付き合ったのは義理だから。お前みたいなアホな女、好きになれるわけがない』って」
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