愛され任務発令中！～強引副社長と溺甘オフィス～

「あ……」

呆然としてしまっていると、手にしていたカードキーを彼女に奪われていく。

それを目で追った先には、彼女の勝ち誇った顔。

「ごくろうさま。気をつけて帰ってね、秘書さん」

そう言うと彼女はパンプスを脱ぎ、迷いなく寝室へと消えていった。

バタンとドアが閉まる音を聞き、慌てて副社長の自宅を後にする。


エレベーターの呼び出しボタンを押すとすぐにドアは開かれ、乗り込んだ。

「……彼女、いたんだ」

下がっていくエレベーターの中でポツリと漏れてしまった声。


そんな噂聞いたことなんてなかったし、気づきもしなかった。……でもいたんだ。それもとびっきりお似合いな彼女が。

可愛らしくて着ていた服も身に着けていたアクセサリー類も、どれも高価そうなものばかりだった。

彼女こそ副社長の彼女に相応しい人。


一階にたどり着き、開いたドア。一刻も早くここから離れたくて全速力でエントランスを抜けていく。

外に出て歩道に出ても、全力でひたすらずっと。