愛され任務発令中!~強引副社長と溺甘オフィス~
「とりあえずこれ運ぼうか。台車持ってくるから待ってて」

「あぁ、主任! それなら私がっ……!」


そんなの下っ端のやる仕事! すぐに挙手し取りにいこうとしたけれど、野原主任の容赦ない言葉で止められてしまった。

「小山さんに任せるとちょっと不安だから、ここは俺が行くよ」

「……はい」

にっこり微笑まれてしまい、顔が引きつってしまった。


野原主任は総務部の中で一番優しくて、色々と丁寧に教えてくれているんだけど……一番容赦なくズバッと言うのも彼だったりする。

いや、もちろん野原主任の言っていることは最もだけど。


わかってはいるけど、台車を取りにいくだけも任せてもらえない事実に肩を落としてしまったとき、エントランスに常駐している受付の社員の少しだけ強張った声が聞こえてきた。


「お疲れさまです、副社長」


咄嗟に玄関の方を見てしまうと、受付の社員は深々と頭を下げていて、頭を下げられている人物はこちらに向かって来ていた。


「お疲れさま」

ワンテンポ遅れて挨拶を返すと、凛とした姿でカツカツと革靴の音を鳴らし、颯爽と歩み寄って来る。
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