愛され任務発令中!~強引副社長と溺甘オフィス~
頬に手を当てオロオロするお母さん。

どうやらお父さんは今日早出らしく、もう既に出勤したようだ。

「とにかく変にやる気を出し過ぎないようにね。あんたは昔からやる気を出すと、必ず空回りしてきたんだから。それにしても大丈夫かしら。異動して週末からはひとり暮らしを始めるなんて。心配で仕方ないわ」

相変わらず小言を並べるお母さんに、せっかくの異動初日の朝だというのに気分が重くなってしまう。

急いで朝ご飯を口に運び、最後に珈琲を飲み干して席を立った。

「ごちそうさまでした」

食器を流し台に運び、そそくさと洗面台へと逃げ込む。

キッチンからは相変わらず「本当に大丈夫かしら」なんて心配するお母さんの声が聞こえてくる。


もう少し娘を信用してくれないかな。というか、こういう日くらい普通に「頑張りなさい」と言って送り出してほしい。

溜息をひとつ漏らし歯磨きを済ませ、髪を後ろでひとつにまとめてクリップで留めた。


「気をつけてね」

玄関先まで見送りにきてくれたお母さん。

週末に買った真新しい少しヒールのあるパンプスを屈んで履いたんだけど……。
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