愛され任務発令中!~強引副社長と溺甘オフィス~
私が知っている限りで副社長の秘書に就いた先輩たちは、みんな優秀だった。そんな先輩たちがギブアップするほどの仕事に、私みたいなペーペーでおまけにやらかしてばかりの人間に務まるのだろうか?


一気に不安が押し寄せてきてしまい、途方に暮れてしまっていると、ストッキングを買いに行ってくれていた田中さんの声が背後から聞こえてきた。


「代表、なぜそのように小山さんの不安を煽るような言い方をなさるんですか」

振り返ると呆れ顔の田中さんが、こちらに歩み寄ってくる。


「むっ……! べつに不安を煽りたいわけではない。和幸のことをしっかり知ってほしいからこそ、包み隠さず話したまでだ」

得意気に話す代表に、田中さんは大きな溜息を漏らした。そして手にしていたコンビニの袋を私に差し出した。


「今、履いているものと同じようなものを買ってきたのですが、いかがでしょうか?」

いかがでしょうもなにも、買ってきてもらってしまって申し訳ない! 慌てて頭を下げた。

「すみません! もう全然なんでも結構です!! あ、お金っ……」
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