愛され任務発令中!~強引副社長と溺甘オフィス~
お互いビールで喉を潤おした後、注文した料理を箸でつつきながら話題は自然と副社長のことになった。


「でもなんだかんだ言いつつ、副社長の秘書に就いてもう二週間じゃない」

「いやいや、秘書の仕事なんてさせてもらえていないからね? ……おまけに私、色々とやらかしちゃっているし」

最後ボソッと呟くと、紗枝は呆れ顔を見せた。

「菜穂美がなにかやらかすことなんて、許容の範囲内じゃない? 大丈夫、これからじゃない!」


紗枝なりに励ましてくれているのはヒシヒシと伝わってくるんだけど……どうしても前向きな気持ちになんて、なれそうにない。


だって副社長は完全に私を必要としていない。もしかしてこれまで副社長の秘書を務めてきた人たちも、同じ扱いをうけていたのかな?


どんなに頑張っても認めてもらえない、仕事をさせてもらえないと、そりゃ誰だって自分から「辞めます」と言いたくなるかも。

今なら私……副社長の秘書を辞めていった人たちの気持ちが、痛いほどわかる。
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