愛され任務発令中!~強引副社長と溺甘オフィス~
大丈夫、あと一メートル。
カウントダウンし始めたときだった。

「まったく幸和はっ……! 父親を置き去りにして帰るとは何事だ!?」

「代表がモタモタしていらっしゃったからですよ」

突然聞こえてきた大きな声に身体はビクッと反応してしまった。

「わっ!?」

「おっ、小山さんっ……!」


前のめりに倒れていく中で脳裏に浮かんだのは面接の日のこと。あの日もこんな風に前へ倒れていったっけ。

なんてことを呑気に考えている間に全身は痛みに襲われた。


倒れると同時に手離してしまった段ボールの中からは交換用の珈琲筒が散らばっていく。

カランカラン~と円形状の珈琲筒が転がる音が、エントランス中に響き渡った。

「イタタ……」


どうにか起き上がると、「あちゃー」と言いながら頭を抱え込んでしまっている野原主任を、視界が真っ先にとらえる。

「すっ、すみません……」

あぁ、またやってしまった。後悔しても後の祭りと分かってはいるけれど、これは落ち込まずにはいられない。
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