愛され任務発令中!~強引副社長と溺甘オフィス~
感情が読めず、ニコリともしない副社長が? いやいや、なにかの間違いじゃないだろうか。副社長が噴き出すところなんて……だめだ、まったく想像さえできない。


「本当ですよ? 覚えていらっしゃいませんか? 面接日のことを」

「面接の日、ですか?」


「えぇ。あの日、副社長も同席されており、小山さんが豪快に転倒された際、口元を押さえて必死に笑いを堪えていらっしゃったんですよ? あんなお姿、久し振りに見たので大変驚きました」


田中さんは感慨深そうに話されておりますが、えっと……これは喜ぶべきなのだろうか。だってつまり私の失態を見て笑っていたってことでしょ?

感情を表に出さない彼が私の失態を見て笑ってくれたのかと思うと、嬉しいような嬉しくないような……複雑な気持ちだ。


「私の方から代表に報告いたしまして。是非とも小山さんを採用し、副社長の秘書に……となった経緯です。ですので小山さん、自信もって業務にあたってください。きっとあなたならあのお方の秘書として、立派に務め上げられると思いますので」


ふわりと笑う田中さんに、胸がトクンと鳴ってしまった。本当に私なんかが、あの副社長の秘書として務まるのだろうか。
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