愛され任務発令中!~強引副社長と溺甘オフィス~
「お前、もう上がっていいぞ」

「え……もう、ですか?」


咄嗟に副社長室の壁にある時計を見てしまう。時刻は十五時前。副社長と待ち合わせの時間は十八時半。さすがに早すぎないだろうか。

戸惑ってしまっていると、彼は小さく息を漏らした。


「女は準備にいろいろと手間がかかるんだろう? 遅れてこられてもこっちが困る。だからさっさと上がれ」

「はっ、はい!」

強い口調で言われ無駄に背筋が伸びてしまった。

「えっと……ではお言葉に甘えて失礼します」

「あぁ」


副社長はすっかり仕事もモードに入っており、書類に目を通したまま。それでも小さく一礼し、副社長室を後にした。



「えっと……ここの細道で合っているんだよね?」

あれから会社を出て、先日副社長に預かった一枚のメモ紙を頼りに目的地へ向かっているものの……。どうやら大通りではなく入りくんだ奥の細道にあるようで、なかなか辿り着けずにいた。
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