カクシゴト
私の家は、細い道を通らなければ行けないところ。


そこは車も通れないくらいの道で、


しかもそこから5分くらい歩かないといけない。


凄くめんどくさい。


「確か、ここに車停めればいいんだよな?」

「いや、ここでいいですよ!

後は近いんで一人で帰れます!」

「先生なんだから送るのは当たり前だろっっ?」

「…じゃあお願いします。」


時計を見ると5時になっていて、


そういえば辺りも暗くなってきている。


道路には私と先生の影が並ぶ。


気づいたら私は先生より少し後ろにいて、


近づく為に少し走った。すると、


それと同時位に先生が止まった。


ドンッと私と先生のぶつかる音がなった。


「きゃっ、ご、ごめんなさいっ」


振り向いた先生は優しい笑顔で


「また、アイス食いに行ってくれるか?」


と聞いてきた。


「も、もちろん!また行きたいです!」

「よかった…」


そんな会話をした後、また先生は歩き出した。


と、思ったらまた振り向いてきて、


私に抱きついた。


「せ、先生!?」

「だめ、だよな。こんなの。

分かってるはずなのに…!」


わけも分からずパニック状態の私は


抱き締め返していいのかさえ分からない。


「松田…。秋桜…。」


いつもより少し低い声で先生は私の名前を呼んだ。


「佐藤先生…」


何故か私も暗くなってしまう。


ハッとして前を見ると、いつの間にか私たちは


家の前まで来てて、


こんなの、お母さんに見られたら


終わっちゃうなとか考えてた。


「先生…」


私も抱きしめ返そうと思ったその時、


何かを思い出したかの様に勢いよく先生は


私を抱く手を離した。


「ごめんな、松田。

何でもないから。」

「佐藤先生…。

私、あのっ…」

「あ、そうだ、そういえばこの間さ…」

「先生、私っ」

「そんなことよりさ、」


何でだろう。


話しかけても流されてしまう。


やだよ、こんなの。


「先生…。」

「…。」

「4月14日、私と出かけませんか?」

「…!

本当か?」

「嘘は言わないです。」

「出かけるか…。どこ行きたい?」

「…考えておきます。」

「じゃあ、連絡先。交換しとく…?」

「はい!」


新しい友達の欄で先生の名前が入ってくる。


「今日すごい楽しかったです!

14日も楽しみです!それじゃあ!」


私がそう言うと、


先生は少し悲しそうな笑顔で私をみる。


「じゃあな、秋桜…。」

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