カクシゴト
「隼人の元カノってどんな人?」


ご飯を食べながら私は問う。


「そんな事、どうでもいいだろ?(笑)」


先生は苦笑しながら答える。


「いや。良くない。

知りたいもん」

「…元カノって言っても、最近じゃないんだよ。

俺が20歳の時かな?

同じ大学の子と付き合ってた。」

「どれ位の期間?」

「1年とか。」

「へぇ〜。どうして別れたの?」

「そいつ金持ちで、親が厳しくて。

大学卒業したらお見合いするって言うから、

振られたんだよ。」

「未練、ないの?」

「ないと言ったら嘘になる。

よりを戻したいとは思わないけどな。(笑)」


そういう先生の顔は


懐かしいものを見るような優しい笑顔で、


先生がどれだけその人の事を思ってたか


分かってしまうくらいだった。


「どんな性格の人?」

「んー、優しい人だったよ。

迷子の子とか見つけると一緒に親を探したり、

年より見つけると荷物持ってあげたり。

人のために何かをするのが好きなやつだった。」


なんとなく気まづい雰囲気になってしまって、


私も先生も食べることに集中した。


_


「ついたぞ。秋桜。」


いつの間にか寝てしまった。


車の中から見える外の景色は…


「水族館!」


奥の方に見える魚の大きな絵に興奮した。


「先生、行こう!」

「おー。

あ、ちょっと待て。秋桜。」


不意に名前で呼ばれ、ドキッとした。


私の顔は多分今真っ赤で、


気づかれないように少し下を見る。


「俺のこと。ちゃんと隼人って呼べよっ」


忘れてた…!


そっか、今日1日だけ先生と恋人かぁ…


「わかった!いくよ、隼人!」


そして先生は私の横を歩く。


チケットを買う時、


私は待ってろと言われベンチに座ってた。


どうして待たされてるのかは分からない。


でも、意外だった。


この場所には、親子で来てる人とか、


カップルが多いと思ってたけど、


そんなことないみたい。


少しガラの悪い人や、チャラそうな人とか


いろんな人がいた。


「ねぇお姉さんっ」

「へ?」


急に話しかけられ、


私はだらしない返事をしてしまった。


よかった、相手が先生じゃなくて。


「今1人?」

「今は、1人です」

「誰かと来てるのー?」


何か、すごいグイグイ来る人。


「うん、彼氏…と、来てる。」


言いながら照れてしまった。


「へえ、いいね、青春って感じ。」

「でしょ!

その人すごくかっこよくてね」

「うんうん」

「なんて言うんだろ。王子様みたいな人なんだよっ」

「へぇ〜会ってみたいなぁ〜」


この人、話がよくわかる人。。


でも、怪しい。


「…なんのようですか?」

「ははっ、いきなり警戒されたなぁ」


ちょっと怖くなって何も言えなかった。


「ナンパ、しようとしてたんだけど、

お姉さん、あまりにも幸せそうに話すから

その気失せちゃった。」


その人は、髪の毛が黒と金が


混ざっておるような感じで、


ほかの人から見れば多分、イケメンってやつ。


「ごめんね(笑)」

「ううん、平気!また別の人探すよ〜」

「お姉さん、頑張ってね。」

「うん、じゃあね」


そういった後、その人は私に


満面の笑みを見せてどこかへ去ってしまった。


「秋桜。今の誰?」


気がつくと目の前にチケットを片手に持った


先生…隼人がいた。


「なんか話しかけられました。」

「ナンパか?」

「確かそんなような事言ってましたね。」

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