ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
隣で眠る男の体温が愛しいはずなのに、美姫の心はどこか冷めていた。
玄関先、ベッドでも積極的に浜田に抱かれ、熱に浮かされていた時は峯岸の事なんて思い出しもしなかったのに、その熱が冷めてしまうと自己嫌悪に陥ってしまっている。
何やってるだろうか?
脳裏から峯岸を追い出す為に、浜田を利用したのだ。
そんなことはない…彼氏だから求めたのだと言い訳を見繕ってみても、脳裏に浮かぶ男がいる。
どうして…消えてくれないのだろう?
浜田の寝顔に触れながら、心で呟いた。
お願い…しっかり捕まえていて
それに答えるかのように、腕枕をしていた手のひらが美姫の頭を優しく撫でてきたのだ。
偶然とはいえ、嬉しくて、浜田の胸に擦り寄り抱きつく。
「んっ…美姫…どうした?」
寝ぼけてる浜田は美姫の動作に反応して話しかけているが、目は開かない。
「なんでもない…」
「…ん」
返事にならない返事をして浜田は、またスヤスヤと眠ってしまった。
もう、峯岸と会うこともそうそうないだろうと自己解決した美姫。
きっと、大丈夫…
時間が経てば、峯岸の事なんて忘れてしまうだろう。