ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
信じたい…
だけど、信じるには何かが足りない。
「だよな…って言う事で、引っ越し先は俺のマンションだから、準備して」
せつなく甘い雰囲気を出していた人はどこに?
峯岸は、放心しかけてる美姫に構わずに、勝手に荷物を詰め出し、ダンボール2箱分の荷物と手提げバッグを用意して、峯岸のマンションに向かう事になっていた。
言いたい事はいっぱいある。
だが、いつもクールだった男が、同棲を喜んで鼻歌を歌いながら荷造りをし、荷物を1人で車に運び終えた後、美姫を気遣うように寄り添って歩きながら段差1つに気を張る姿に苦笑する。
そんな自分の姿に本人も照れ臭いらしく頬を引きつらせいた。
助手席を開けて美姫が座席に座った事を確認した峯岸は、シートベルトまでつけてくれる。
もう、美姫の笑いは止まらない。
らしくない峯岸に気遣い声を抑えクスクス笑う美姫に、男は憎たらしい気に目を細めた。
そして…
美姫の唇を塞ぐ懐かしい温もりに、笑いが止まった。
してやったり顔の峯岸は、そのまま美姫の唇を味わうように角度を変えてキスを深めていく。
突然の事に驚いた美姫だが、峯岸との甘いキスに好きだと再確認させられてしまった。