ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
ドキドキして運転する峯岸が気になる美姫と違い、キスした余韻を引きずる様子もない男の頬が腫れている気がする。
「ねぇ、唇の横、赤く腫れてるけどどうしたの?」
「そうか?気のせいじゃないか」
「そう⁈」
そこで会話が終了し、ドキドキする音が漏れそうで落ち着かなく、また会話を続けた美姫。
「この車…乗り心地、サイコーだね」
「社用車だからな、勝手に他の車が避けてくれる」
確かに、真っ黒な高級車に近寄りたくないと思った。
「社、社用車を勝手に使っていいの?」
「よくないが、美姫をマンションに連れて帰るつもりで乗ってきた」
いつも言葉を選んで本心を見せない人が、ポロっと漏らした言葉を聞き逃さなかった。
連れて帰るつもりで乗ってきたって事は、最初からそのつもりだったんだ…
垣間見えた本心に、嬉しくなる。
そして、マンションにつくと、美姫を部屋に案内し荷物を取りに車に戻って行った。
その間、美姫は峯岸の住む部屋に1人取り残される。
ゆっくりしてろ…
そう言われても、好きな男の家に初めて訪れてドキドキしないはずがない。
リビングにある大きなソファに座ってみたりするが落ち着かなくて、結局、大きな窓から見える外の景色を眺めていた。