ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
そこへ
「おい、峯岸」
「あぁ、悪い。これ、オープン祝いだ」
カウンターの中にいた男性が呼ぶ声に振り向き、手に持っていた小さな観葉植物の鉢を渡していた。
「悪いな」
「この間、親父さんに聞いてて近くを通ったついでだ」
「ふん…ついでかよ」
憎まれ口に憎まれ口を返しあい、男2人で鼻先で笑い合う。
「お腹は?」
「空いてる」
「待ってろ…何か作ってやるよ」
カウンターの中の男性が、料理に取り掛かろうとした時
「美姫ちゃんは何食べたの?」
突然の話の振りにどもりながら答える。
「お、おおオムライスです」
クスリと笑い、峯岸はカウンターの男性にリクエストした。
「オムライスを頼む」
一瞬、キョトンとした男性は、意味深な笑いを浮かべ『了解』とオッケーサインを出していた。
店内には、お客でいるのは美姫と早希だけ…
そろそろ、出なければと2人は相槌を打つ。
「私達、そろそろ帰ります。じゃあ、また…」
ほぼ初対面の相手に、会う機会もないのに社交辞令を言い、会計を済ませた時だ。
早希のスマホが振動したらしく、画面を見つめる早希。