ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
「ごめん…彼だ」
そう言って、先にお店の外に出て行く。
うわッ…置いてかないでと、見えない手が早希を追いかける。
挨拶したし、このまま帰っていいよね⁈
そう思いながら、心の底ではまだ話すタイミングがないだろうかと探る。
そんな時、峯岸に作られたオムライスが出てきた。
「お待たせ」
「美味そうだ…」
「美味いんだよ」
また、男同士の憎まれ口が始まった。
つい、おかしくて口元を押さえて笑ってしまった。
「美姫ちゃん、美味しかった?お世辞はこいつの為にならないから本当の事を言ってよ」
「あぁ…」
不機嫌な声を出した男性を叱るように名前を呼ぶ先ほどの女性。
「けいちゃん。お客様の前でしょ」
苦々しい表情の男性に、ビビリながら美姫は答えた。
「とても、あの、美味しかったです。また、食べたいです」
ほらな、とドヤ顔の男性。
「美姫ちゃんの味覚を信じて食べてやるよ」
なんて、減らず口を言って美味しそうに頬を緩ませながら口の中に何度もスプーンを運んでいた。
そこに早希がいつまでも出てこない美姫の様子を見に店の中に戻って来た。