ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

「あっ、早希さん…」


「美姫、ごめん。今から彼氏とデートになったの」


手を合わせ、謝る早希。


付き合い出したばかりの彼氏を優先するのは仕方ない。


「わかりました…」


「本当にごめん、すぐ近くにいるらしいから先に行くね」


慌ただしく、お店を出て行ってしまった。


仕方ない…帰るにはまだ少し早いが明日も仕事だ。


「じゃあ、私も帰ります」


「美姫ちゃん、待って…駅まで送って行くよ」


「えっ、だ、大丈夫です。すぐに大通りですし…」


「今も、実家通い?」


「いいえ…働きだして1人暮しです」


えっ、今もって言ったよね。


パニックになる頭。


峯岸は美姫を覚えていたのだろうか?


1人であたふた悩んでいるうちに、Forestのスタッフ2人に見送られ峯岸と歩いていた。


沈黙がとても辛い。


かと言って、何を話していいかもわからないから口を閉ざしていた。


心の中では、昔、同じ車両に乗っていた私の事覚えてる?


何度も同じ質問をリピートしていたが、否定されるのが怖くて聞けないでいた。


そんな中、美姫のスマホが今度は鳴った。


「もしもし、浜田さん」
< 15 / 119 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop