ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
「あっ、早希さん…」
「美姫、ごめん。今から彼氏とデートになったの」
手を合わせ、謝る早希。
付き合い出したばかりの彼氏を優先するのは仕方ない。
「わかりました…」
「本当にごめん、すぐ近くにいるらしいから先に行くね」
慌ただしく、お店を出て行ってしまった。
仕方ない…帰るにはまだ少し早いが明日も仕事だ。
「じゃあ、私も帰ります」
「美姫ちゃん、待って…駅まで送って行くよ」
「えっ、だ、大丈夫です。すぐに大通りですし…」
「今も、実家通い?」
「いいえ…働きだして1人暮しです」
えっ、今もって言ったよね。
パニックになる頭。
峯岸は美姫を覚えていたのだろうか?
1人であたふた悩んでいるうちに、Forestのスタッフ2人に見送られ峯岸と歩いていた。
沈黙がとても辛い。
かと言って、何を話していいかもわからないから口を閉ざしていた。
心の中では、昔、同じ車両に乗っていた私の事覚えてる?
何度も同じ質問をリピートしていたが、否定されるのが怖くて聞けないでいた。
そんな中、美姫のスマホが今度は鳴った。
「もしもし、浜田さん」