ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
惑わせないで
言い返す言葉が見つからないまま抱きしめる男の胸を押し、一歩下がった美姫の手首を峯岸が掴んできた。
「俺は、お前が気に入ったから口説いてる」
「気に入っただけ⁈私が浜田さんの彼女だって知ってますよね」
「あぁ、知ってる」
「だったら…」
表情1つ変えない男に苛立って、次の言葉が出てこない。
「だったら?」
「だから…浜田さんに変な誤解をされたくない。私は、浜田さんの彼女です‥だから、こんなこともうしないで…あなたぐらいかっこいい人なら女が寄ってくるでしょう⁈私じゃなくてもいいじゃない」
「だから、だからってなんだ?俺が嫌いなら浜田に告げ口をすればいい」
苛立ってきたのか整えていた髪を手でかき乱し…口調が先ほどまでと変わっていた。
「そんなこと…できない。2人の仲が悪くなるわ」
「俺は浜田と仲良しをするつもりはない。気に入った女が、同期の女だったってだけだ。浜田の女でいたいならいればいい。俺は構わない」
思わせぶりな事を言いながら、突き離す言い方に心が揺らいでいた。
浜田の彼女だと自分で言ったのに、もっと強引にきて欲しいと願ってしまう。
そんなすぐに私を諦めるの?