ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
彼氏がいながら、目の前の男に諦めないでと無意識に下唇を噛み見つめていた。
浜田と言う素敵な彼氏がいながら、峯岸にも心が動いている。
「美姫…」
甘く艶めく声で名前が呼ばれる。
「そんな顔をするな……俺ともつき合うか?」
掴んだ手首を引っ張られ男の腕の中に戻ると、自分の目元を手のひらで押さえた男はしばらく何かを考えているように無言になった後、口元を綻ばせて艶めかしい手つきで頬を撫で笑った。
「えっ?」
なんて言ったの?
「いや、違うな…俺と背徳感を楽しんでみるか?決めるのはお前だ…」
ずるい…
私に選択権を委ねてくる。
背徳感…
そんな魅力的な言葉で、惑わせないでほしい。
浜田さんがいるのに…と思いながら、この男の腕を振り払えない時点で、美姫の心は峯岸に囚われているのに、踏み込めないのは浜田を裏切る罪悪感を拭えないからだった。
答えない美姫の顎を掴み視線を合わせてくるが、心が決まらない美姫は視線を彷徨わせ逃げる。
そんな美姫の心を揺さぶるように
「浜田にばれなきゃいい」
と、耳元で悪魔のように魅惑的な声で囁いた峯岸だが、まだ美姫の心はつかめなかった。