ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
だが、峯岸は違った。
我を忘れ乱れることもなく、舌先を絡めては離れて、離れたと追いかければ、根元まで舌を絡め口内を余すとこなく侵していく。
そして、潤んだ瞳をして蕩けきった美姫の頬を撫でた男の指が耳の輪郭を辿りながら、焦らすように啄むキスをする。
浜田とは違うキスに美姫は夢中になっていた。
こんなキスは初めてだった。
キスが止まり、意地悪く笑う峯岸の口元。
それさえも、愛しく見えてしまう。
やっぱり、好き…
昔は、淡い恋心だった。
見た目だけで、恋に落ちた。
ただ、見ているだけでよかった男と再会し、男の一部分だけしか知らない今だが…
それでも、自分の恋が燃え上がるのに充分だった。
キスをしただけで、この男がほしいという欲求
もう、止まらない…
浜田と別れることになっても、この恋に身を任せてもいいと思っていた。
それだけ、峯岸とのキスはよかったのだ。
今だに、キスの余韻から覚めない美姫の唇をなぞる男の指先が気持ちいい。
ジワッと疼く甘い余韻が残る。
「俺とのキスはそんなによかった?」
そんなことを聞かれるとは思ってもいなかった美姫は、頬を赤らめた。