ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
ため息の原因は浜田ではないが、ずるさを覚えた美姫は笑ってごまかし、更衣室を出たのだった。
コンフォルトは、美姫の会社と浜田の会社の中間地点にある。
駅に近い事もあり、賑わうお店だ。
帰宅時間帯には、駅周辺は人でいっぱいで知り合いとすれ違っても気がつくのが難しいほど、人の流れが早い。
そんな中を突き抜けて、コンフォルトに向かっていた美姫の腕を掴んだ手があった。
だれ?
美姫を悩ます元凶の男が立っていた。
こんな所で会えるとは思ってもいなかった美姫は、言葉もなく立ち尽くす。
周りから、迷惑そうにジロジロ見られていても気がつかないほど、峯岸に会えた事に喜んでいた。
「久しぶり」
峯岸にそう言われ、コクンと頷く美姫。
言いたい事がたくさんあったのに、忘れてしまった。
「帰りか?」
浜田を待たせてると思い出し返事に困る美姫を見て、峯岸の感が働いた。
「浜田と会うのか?」
嘘をついても仕方ない。
美姫は、浜田の彼女なのだから後ろめたい事はないと頷いた。
「なら、行こうか」
美姫の手を取り、手を繋ぎ引っ張って歩いてく。
「…どこに行くの?私、浜田さんと待ち合わせしてるんだよ」