ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

「どこで待ち合わせだ?」


「コンフォルトだけど…」


「俺もコンフォルトに飲みに行くつもりだったから、ちょうどいいな」


何が?
ちょうどいいのだろう…


「よくないよ…2人で入って行ったら浜田さんが驚くって」


「そんなのどうとでもなるから、来いよ」


尻込みする美姫の肩を抱き歩く峯岸。


初めて峯岸に肩を抱かれドキドキする美姫は、嬉し恥ずかしさで顔を真っ赤にさせ、頬が緩んでいた。


そんな美姫の耳元に顔を近づけ峯岸が囁いてきた。


「美姫、かわいい」


更に、茹だったように顔が熱くなる。


「そんな顔、浜田に見せるなよ」


チュッと側頭部にキスをし、頭を撫でる峯岸に翻弄される美姫は、肩を抱いたまま歩く峯岸の腰に抱きついても、男は嫌がらず美姫の頭を肩に抱き寄せ歩いてくれる。


峯岸から香るほのかな香り


スパイシーな柑橘系の匂いがした。


しばらく歩くと、『コンフォルト』が遠くに見えてくると、峯岸は肩を抱いていた手を離した。


あっさりと離れた距離に、名残り惜しいのは自分だけの気がして、立ち止まった。


「先に店に入ってるから、その顔何とかしてから来いよ」


頭をポンと撫で笑う男は、美姫を置いて先に歩いて行ってしまった。
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