ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
『お客さんからのもらい物だから、気にしないでもらってよ。2人でリフレッシュして来て素敵な笑顔をまた見せてくれると嬉しいな」
そう言われると断りづらい。
1年先輩の石塚さんと目を合わせ、頷いた。
『ありがとうございます』
浜田さんは、口元に人差し指を当て内緒ねと示し笑った。
そんなことがあってから浜田さんとよく喋るようになり、何人かで飲みに行く間柄から自然と付き合うようになるまで時間はかからなかった。
忙しい彼とはなかなか会えないが、時間が空く時は事前に連絡をしてくれて、こちらの都合を優先してくれるのだ。
自分勝手な男しか知らない美姫には、浜田さんは、優しくて、気遣いを忘れない大人の男だった。
そんな彼との久しぶりのデート。
昨日の夜からウキウキとして、週末の金曜だと言う事もありソワソワとして落ち着かなかった。
「浜田さんとデートでしょう?」
「えっ、わかります⁈」
業務が終わり、着替えを済ませた更衣室で化粧を直していると、石塚さんが意味深に笑っていた。
「隣の私のことなんて忘れて、お昼に浜田さんとアイコンタクトしてたじゃない⁈。デートだなぁって気がつくわよ」