ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

去り際の浜田の表情が脳裏に浮かぶ。


唇をきつく閉じて強張る表情に笑みを無理に作り、美姫を抱きしめようかと躊躇い、ぎゅっと拳を作り美姫を見つめていた。


『…前の香水の方が好きだった』


そう言って、悲しそうに笑みを浮かべタクシーに乗り帰って行った。


仕事がある平日は、香水の匂いを嫌う人もいるのでつける事はない美姫は、最初、浜田が言った意味がわからなかった。


部屋に入り、着ていた上着をハンガーにかけようとした時、服から香るスパイシーな柑橘系の匂いに気づいた。


それは、峯岸から香った匂いだった。


そして…浜田の表情と去り際の言葉が思い出された瞬間、美姫は上着を抱きしめその場に崩れるように座っていた。


まさか…


匂いで気づいたのだろうか?


タクシーの車中で、浜田からの意味深な質問…


あれは…


鎌をかけられた⁈


確信はないが、何かに気づいた浜田。


でなければあんな事を言わないだろう…


彼氏がいるのに、峯岸に恋をし…欲張りになって2人の男の間を行ったり来たりし、優柔不断な自分にバチが当たったんだと天井を見上げた。


浜田を傷つけてしまった…
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