ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
はいと頷きながら店内を見渡していると、浜田さんが私に気がついてくれたらしく、迎えに来てくれた。
「美姫」
こちらに向かいながら呼ぶ声に、マスターも頷き微笑むと奥へと下がって行った。
「浜田さん、お待たせしました」
「いや、たいして待ってないよ。偶然、久々に会う同期と会ってね、話しに盛り上がっていたんだ」
内心、邪魔が入ったと落ち込んでいたが、浜田さんに嫌われたくないので微笑んだ。
「私、別の日にしましょうか?」
心にもない事をいいながら、彼の心を探る。
「美姫と久しぶりのデートなのに、延期にしたら今度、いつデート出来るの?その服は俺の為でしょう⁈」
優しい彼が、そういうであろうと予想していたけど、甘みを含んだ声で囁かれたら頬が赤くなる。
「赤くなってかわいい…早く2人きりになって美姫を抱きたいよ」
耳元で囁く艶めいた声に、体中が熱くなっていた。
そんな私を楽しげに笑い、手を繋いで席まで導いてくれる。
案内された席には、浜田さん以上の魅力的な男性がソファに座っていた。
浜田さんが頼りがいのあるドーベルマンの犬に例えるなら、彼は寡黙でミステリアスな黒豹のよう…