ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

はいと頷きながら店内を見渡していると、浜田さんが私に気がついてくれたらしく、迎えに来てくれた。


「美姫」


こちらに向かいながら呼ぶ声に、マスターも頷き微笑むと奥へと下がって行った。


「浜田さん、お待たせしました」


「いや、たいして待ってないよ。偶然、久々に会う同期と会ってね、話しに盛り上がっていたんだ」


内心、邪魔が入ったと落ち込んでいたが、浜田さんに嫌われたくないので微笑んだ。


「私、別の日にしましょうか?」


心にもない事をいいながら、彼の心を探る。


「美姫と久しぶりのデートなのに、延期にしたら今度、いつデート出来るの?その服は俺の為でしょう⁈」


優しい彼が、そういうであろうと予想していたけど、甘みを含んだ声で囁かれたら頬が赤くなる。


「赤くなってかわいい…早く2人きりになって美姫を抱きたいよ」


耳元で囁く艶めいた声に、体中が熱くなっていた。


そんな私を楽しげに笑い、手を繋いで席まで導いてくれる。


案内された席には、浜田さん以上の魅力的な男性がソファに座っていた。


浜田さんが頼りがいのあるドーベルマンの犬に例えるなら、彼は寡黙でミステリアスな黒豹のよう…
< 6 / 119 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop