ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

「ひどいのはお前だろ…浜田を裏切って俺に何度も抱かれた癖に、被害者ぶるな。俺がいるのに何もなかったように浜田と普通に会話できるお前って、どうなの?よく平気で電話に出れるよなぁ⁈」


言いたくもない事を捲し立て、美姫から離れた峯岸は落ちている服を次々と着ていく。


その姿を見ながら美姫は泣いていた。


「平気なんかじゃないよ…浜田さんに疑われてるのに電話に出ないと怪しまれるって思ったからなのに…」


「疑われてる⁈」


「普段、香水なんて私がつけないの。それを知ってる浜田さんが前の香水の方が好きだったって…私の服に峯岸さんの移り香がついていたから…」


泣きながら、思うままに喋る美姫


移り香か…盲点だった。


「悪い…お前達の関係を壊すつもりはない。匂いなんて一緒にいたからとか言ってごまかせるだろう⁈浜田に何か言われたらうまく誤魔化しておくから、泣くなよ」


美姫の頬を伝う涙を指の腹で拭い、視線を合わせ見つめる。


「大丈夫だから…」


手離せないと思った女が、彼氏との危機に泣く姿にどうしていいのかわからず、ただ、不確かな言葉で宥め抱きしめてあげるしか思いつかなかった。


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