ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
別れの決意

翌日、浜田から何度も連絡が来ていた。


だが、電話に出る元気もない、メールを開ける気も出ない。


閉じたカーテンの隙間から外の明かりが入ってくるが、ベッドに寄りかかり動く気力も出てこないのだ。


手に持つスマホと峯岸の名刺


何も考えられず、ただボーとどこかを見ている。


峯岸か出て行ってから、どれだけ時間が経ったのか?


玄関の向こうから何度も鳴る呼び鈴の音に、意識が反応して、動く気力もなかったのに自然と足が向かっていた。


峯岸じゃないとわかっていながら、もしかしたらと期待してドアを開けた。


そこにいたのは、美姫の大切な人だったはずなのに嬉しいと感じないのだ。


「無事でよかった」


ホッと胸を撫で下ろした仕草で、安堵の表情をしている。


「電話をかけても出ないし、メールも既読にならないから心配して来てみたんだけど…元気じゃないみたいだね」


美姫の顔を見て、顔をしかめる浜田。


「すみません…」


一言、謝るしか今の美姫はできなかった。


「顔色はよくないけど…無事な姿を見れてよかった。
美姫の顔を見るまで心配で1日過ごせそうにないと思って来たんだけど、迷惑だった?」

< 63 / 119 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop