ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
別れの決意
翌日、浜田から何度も連絡が来ていた。
だが、電話に出る元気もない、メールを開ける気も出ない。
閉じたカーテンの隙間から外の明かりが入ってくるが、ベッドに寄りかかり動く気力も出てこないのだ。
手に持つスマホと峯岸の名刺
何も考えられず、ただボーとどこかを見ている。
峯岸か出て行ってから、どれだけ時間が経ったのか?
玄関の向こうから何度も鳴る呼び鈴の音に、意識が反応して、動く気力もなかったのに自然と足が向かっていた。
峯岸じゃないとわかっていながら、もしかしたらと期待してドアを開けた。
そこにいたのは、美姫の大切な人だったはずなのに嬉しいと感じないのだ。
「無事でよかった」
ホッと胸を撫で下ろした仕草で、安堵の表情をしている。
「電話をかけても出ないし、メールも既読にならないから心配して来てみたんだけど…元気じゃないみたいだね」
美姫の顔を見て、顔をしかめる浜田。
「すみません…」
一言、謝るしか今の美姫はできなかった。
「顔色はよくないけど…無事な姿を見れてよかった。
美姫の顔を見るまで心配で1日過ごせそうにないと思って来たんだけど、迷惑だった?」