ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめん…なさい」


「寝たのか聞いてるんだ」


怒鳴る声に体が震える。


こわい…


何も言えない美姫に苛立つ男。


「否定しないって事は寝たんだろ。くそッ…」


美姫の腕を強く掴み、部屋の中にズカズカと足音を立てて入って行くと、美姫をベッドの上に突き飛ばした。


美姫の上に跨り、押さえつけ無理やり抱こうとする恐怖に、逃げようと暴れるが男の力には敵わない。


いやだ…


「…イヤ。助けて…蒼斗」


無意識に、愛しい男に助けを求め泣き叫んでいた。


拘束を緩めた浜田が悲しい表情をし、美姫の上から降りると背を向けて床に胡座をかいて座ると手のひらで顔を覆った。


「なんで、峯岸なんだよ」


哀しい声で呟く浜田に、美姫は体を起こしその背を見つめる。


私のせいなのだ。


その時、自分の浅はかな行動が、浜田をこんなに傷つけるとは考えていなかった自分の勝手さを後悔する。


峯岸との事は後悔していないが、浜田を傷つけたかった訳じゃない。バレなければいいと、どこか安易な自分がいたのだと…


「峯岸さんは私の初恋の人だったんです。あの日再会して私が、勝手にまた好きになっただけで彼は私を好きじゃないんです。それでも彼が好きだから、1度でいいからとお願いしたのは私なんです」
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