ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
浜田が出て行き、1人になった美姫は玄関に向かって心の中で何度も謝る。
ごめんなさい
ごめんなさい
傷つけてごめんなさい。
傷つけるつもりなんてなかった。
でも、美姫から別れを言えば結局傷つけてしまった。
人を傷つけた痛みが、こんなに痛いなんて…
初めて知る痛みに心が押し潰れそうになる。
それでも、一夜明けてしまえば、その痛みが薄らいでいくのはどうしてだろう⁈
朝、目覚めればいつものように出勤する準備を始めている鏡の中の自分に呟く。
「意外と図太い神経してるのね」
何か変わろうとして、口紅をいつものヌードピンク色より濃いピンクローズ色を選んでいた。
休みあけのいつもと変わらない日常
出勤し、受付カウンターで普段通りに仕事をしている。
失恋した人だろうか?
恋人を傷つけた人だろうか?
自分自身に疑問を持つほど、意外と平気でいる。
人から聞く話だと、ご飯も喉を通らない。
食欲がわかないと言うけど、お腹が空けば食欲がわき、平気で食事をしている。
今までと何も変わらない日が過ぎてから3日経った日のお昼過ぎ、受付に浜田が現れた。