ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

浜田の担当区域が変わらない限り、会うだろうと思っていたが、少しやつれた浜田を見てチクッと胸が痛む。


だからと言って、傷つけた自分から話しかけていいのかもわからない美姫は、平静を装う。


「お疲れ様です」


美姫を見て会釈だけした浜田は、美姫の隣にいる早希にアポの確認をお願いしたのだ。


早希は、怪訝な表情を一瞬見せ、浜田と美姫を見ている。


視線を合わせない2人に何かを感じ、普段通りにアポの確認を取り浜田を通した。


その間、浜田が美姫を見ることは一度もなかった。


帰る時も、前の浜田なら美姫に必ず話しかけていたのに、素っ気ない態度で帰って行く。


寂しく感じた美姫だが、そんな浜田の態度に、仕方ない、自業自得だと言い聞かせていた。


終業後、更衣室で私服に着替えた美姫に早希が険しい表情で話しかけてきた。


「美姫、あなた達ケンカでもしたの?違うわね、ケンカにしたらよそよそすぎるわ。浜田さん、なんだかやつれていた感じがするのは、どうして?」


美姫を責めるような言い方に、早希が浜田をまだ好きなのではと感じた。


「早希さん、ここじゃ話しにくいから、この後時間ありますか?」
< 70 / 119 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop