ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

結婚もしてないのに、妊娠したと会社に言えば辞めさせられるかもという不安。


未婚で出産すれば、両親はどう思うだろうという不安。


それらがちらつき確かめる事を後回しにして、妊娠していない事を願ったりもする。


だが、確実に体の変化がある。


とうとう、美姫は会社の更衣室で倒れてしまい、会社の医局に運ばれ、常時、待機している医者に言われてしまった。


「有村さん、たぶん妊娠してますよ」


たくさんの不安要素は、妊娠してた喜びから忘れ去られる。


1人でも、育ててみせる。


彼の子を産みたい。


1人で産み、育てる事は並大抵の苦労ではない。


それでも、この子を抱きしめたい…その思いで、出産すると決めれば、今までの体調不良もなくなり、食欲も戻ってくる。


食欲のなかった彼女に突然食欲が戻ってくれば、早希は妊娠を疑いだす。


「美姫、お腹に赤ちゃんがいるんじゃない?」


お腹が大きくなれば、ごまかせないと美姫は覚悟を決めた。


「はい…でも父親は浜田さんじゃないですから安心してください」


「そんな事聞いてないわ。産むつもり?」


「はい…産みます」


美姫は、笑顔で答えた。
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