ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
「私もいるんだからね」
「はい、頼りにしてます」
「まかせて…たまに、甥っ子の世話をしてるから子どもの扱いはわかってるつもりよ」
胸をたたく自信満々な早希さんに『ふふふ』と笑うと彼女もつられて笑った。
早希さんの後押しで、両親に未婚で出産をする事を伝えに実家に行くと、やはり、めちゃくちゃ怒られてしまう。
第一声が、
「バカもん…子どもが子どもを産んで育てるつもりか?」
20歳を過ぎて大人だと思っていても、両親にとって私はいつまでも子どもだったらしい。
「そうかもしれない。それでも、この子を産みたい」
「世の中の厳しさも知らないくせに、生意気言うな。男女平等と言いながら、まだシングルマザーには世間の目は厳しい。どんな風に思われるかわかっているのか?片親というだけで、その子にも辛い思いをさせるんだ。仕事だって、どうするつもりだ。何の資格もない子持ちのお前を雇ってくれるところがあるのか?」
両親が心配して言ってくれてることは、理解してるつもりだ。
「わかってる。それでもこの子は私の中で生きてるの。1人でこの子を産むのは私のわがまま…だから、頑張ってみせる。でも、でもね…」