ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
美姫は、両親に1人で子どもを産んで育てることを許してもらおうと思わない。
だけど、美姫のお腹に宿ったというだけで、この子は何も悪くないのだ。
「この子を孫として認めて可愛がってあげてほしい」
頭を下げる美姫に、怒りながら泣く父の声に顔をあげる。
「バカもん…当たり前だ。私達の初孫だぞ。可愛いに決まってる…なぁ、母さん」
「そうよ。1人で頑張る必要なんてないのよ。お父さんは、あなたの決意を知りたかったのよ。美姫の思うほど、世間は優しくないの…それでもあなたが覚悟するなら、どんな手助けもするわ。そうよね、お父さん」
両親、2人して涙目になりながら頷きあっている。
「あぁ、まぁ、いろいろ言ったがお父さん達がいる。美姫は1人じゃないぞ。お前が産むと決めたんだ…どうせなら、こっちに戻って産んだらどうだ?」
「そうよ、戻ってらっしゃい。その方がお母さん達も安心だわ」
両親に反対されると思っていたが、なんだかんだと言いながら孫ができた事を喜んでくれて、ホッとしていた。
「仕事もあるし、すぐにっては無理だよ。でも、その時はお願いします」
「あぁ…ところでだな…その…お腹の父親のこと何だが…」