ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

聞きにくそうに、言葉を選んでいる。


1人で産むことを許してくれるのに、言わないわけにはいかないだろうと、美姫は喋りだした。


「この子の父親になる人とはね…私が妊娠してるって知らないで別れたんだ。お父さん達が心配しているような既婚者じゃないけど、連絡をとるつもりはないの。産むと決めたのは私。だから彼には義務とか責任とか感じてほしくないから、知らせないし、知らなくていいと思ってる」


「美姫の気持ちはわかるけど、1人で妊娠なんてしないのよ。シングルマザーを貫くなら貫きなさい。でも、いつかその子は父親は誰か知りたくて、探すかもしれない。その時、初めて子どもがいた事を知ったその子の父親はなんて思うかしら?あなたが好きになって産もうとしているその子の父親は、薄情な人なの?可愛い子ども時代を見たかったと思わないかしら…」


「知らせるのも知らせないのも美姫の勝手だが、母さんの言うとおりだ。お前が、父親の権利を奪うのはどうかと思うぞ。考えてみるんだな」


父と母が言った言葉が、美姫を悩ませている。


自分のことばかり考えていた…


彼は関係ないと、最初から無視していた…


この子から父親を奪う権利は私にはないのだ…
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