ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

知らせてどうなる…


私達は、愛しあっていた恋人同士ではない。


私の初恋の人…だけど、思いを伝えるには彼は恋愛に不向きな人だった。


彼は、背徳とスリルを味わう為の一途の関係だったと思っている。


そんな相手から妊娠したと伝えられて、彼は何て思うのだろう?


彼氏がいながら、別の男と寝る女の話を信用してくれるだろうか?


本当に俺の子なのか?


そう言われたら…心が折れそうで耐えられそうにない。


美姫の中でいつまでも峯岸は、魅力的な男で一緒に過ごした思い出は素敵な時間でなければならない。


あの夜は愛しい人との大切な思い出であり、子どもを授かった日なのだ。


それを否定されてしまったら、お腹の赤ちゃんを産む決意が揺らぎそうで怖い。


だから、知らせたくもないし、今は知られたくもない。


いつか、彼が知った時、美姫を責める日が来れば、その時に父親の権利を奪ったと罵ってくれた方がいい。


お腹を触りながら、美姫は呟く。


「お父さんがいなくてごめんね」


父親がいなくて寂しくて悲しい思いをさせるだろう…


いつか、父親がいない事を罵るかもしれない。


それでも、できる限りの愛情をあげよう…
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