ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

左右に美姫は首を振りそんなことないと笑った。


ただ、心配かけたくなかったのだ。


その数日後、早希と2人で会社を出た帰りに、待ち伏せしていた浜田さんに呼び止められる。


「少し、2人と話したいんだけど、いいかな?」


何かを思いつめたような真剣な表情の浜田に、美姫も早希も断れなく、目についたファミレスで3人して食事をすることになった。


「美姫、会社辞めて1人で産むって聞いたけど、本当?」


席に着き、料理をオーダーするなり目の前に座っていた浜田が唐突に言ってきた事で、少しだけ動揺した早希と視線が重なった。


「はい…」


「そうか…大丈夫?」


「子どももいるし、当たり前じゃないですか」


「美姫にとって、峯岸は特別だったんだな」


胸の奥がチクンと痛む。


私は峯岸の特別になれなかった…


だけど、この子を私に授けてくれた。それだけで私は特別なのかもしれない。


「その…わかっているんだ。だけど、前に進む為にはっきり教えてほしい」


「なんですか?」


「お腹の子の父親は、本当に峯岸?」


浜田がそんな事を言うと思っていなかった2人は、驚いている。
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