ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
「お前の好みの女の顔はわかってるからな…当ててやろうかと思ったんだ」
ふざけた奴だ。
「で、お前をそんな表情にする美姫ちゃんは、お前の何?」
しつこい…
「終わってる女だよ」
「へー、その割に未練がましく名前を呼んでいたぞ」
「気のせいだろ」
「お前がそう言うなら、気のせいなんだろうな…俺が初めてほしいと思った女は、この俺から逃げていこうとしている。他の男と幸せになる姿なんて想像もしたくないね」
「それは、恋愛に興味が持てない俺へ言ってるのか?ゴタゴタ言ってないで、店の前に着いたんだ。降りろよ」
「まぁ、聞けよ」
「いやだね」
「なら、俺の独り言だ。彼女に惹かれている。どんな手を使ってでも、俺の側に置いて、必ず振り向かせてやる。彼女を逃したら、俺は一生、独身だよ」
だから、なんだと言うんだ。勝手にしろよ。
「彼女以外の女じゃ心も体も満たされないんだ。他の女がほしいと思えないんだよな」
それだけを言って口を閉ざした零の言葉が、峯岸の心に突き刺さっていた。
零が彼女を迎えにブティックの中に入って待っている間の時間を持て余している峯岸は、美姫と浜田の姿がいつまでも忘れられないでいた。