ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
「お前と別れたなら、遠慮なんてしない。美姫は返してもらう」
「フッ、遠慮してたのか?バカにするな」
もう一発、殴られた頬を直撃する。
だが、今回は殴られる覚悟をしていた峯岸は、その場に踏ん張っていた。
「…美姫を頼む」
「頼まれなくても、幸せにする」
殴られた頬を撫でて、峯岸は笑った。
そして、浜田も…
そこには女にはわからない、男達の駆け引きがあったらしい。
早希は、笑う2人を複雑な気持ちで見ていた。
そんな早希に、浜田は微笑み帰ろうと促す。
「大丈夫だよ。美姫のことは峯岸にまかせよう。こいつは、もう、逃げたりしないさ」
自分の気持ちからも…
美姫からも…
逃げていた自覚があるだけに、苦笑いを浮かべた。
「今までの俺から信じてくれって言っても信じられないだろうけど、信じてもらえるまで粘るよ」
「…美姫を愛してるのよね」
早希の直球に、峯岸は頬をひきつらせながら笑ってみせた。
「美姫を不幸にしたら許さないから…」
早希の威嚇に、峯岸の表情が引き締まる。
「美姫が幸せかどうか、いつでも確かめに来いよ」
自信満々な峯岸のセリフに、早希は次のセリフを忘れてしまう。