ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
「言われなくても、2人で確かめに行くさ。美姫に似たかわいい赤ちゃんが生まれるのを楽しみにしてるよ」
「美姫に似て、かわいいに決まってるだろう」
「もう、のろけか⁈嫌味が通じないなんて面白くない。早希…帰ろう」
峯岸に呆れた浜田は、早希の肩を抱いたまま帰って行った。
その後ろ姿を見送り振り返ると、そこにニヤついた男がいた。
「面白いもの見せてもらったよ」
フォーマルスーツを着こなした嫌味な男が、峯岸の汚れたスーツの上着を手のひらで払った。
「やめろ…汚れるぞ」
「汚れてるのはお前のスーツだろう」
「どこから見ていた?」
ニヤリと笑う峯岸の雇い主であり友人の零は、峯岸の睨む表情に少しの危険を感じ、一歩後ろに下がった。
「男の胸ぐらを掴んだところからだけど、会話の内容はお前が殴られた後からかな⁈」
最初から、見られていたのかと気まずそうに話しをごまかす事にした。
「あの女の準備はまだ出来ないのか?」
「もう、そろそろ出てくるから慌てるなよ。美姫ちゃんは逃げて行かないさ」
俺に連絡する気も会う気もなかったのに、そんなの分かるものか?