ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

しばらくすると、零と女が店から出てくるのを見つけた峯岸は、綺麗に着飾った女に零の表情がデレているのが面白く、間近で見てやろうと言う好奇心からドアを開けてやると、零は得意げな笑みを浮かべた。


それは、まるで…自分の事のように。


こいつが、こんな表情を見せるなんて…


会場のホテルまでの車内、後部座席で零が女にイチャつきだし、その溺愛ぶりにのぼせそうだった。


やっと会場に到着し、空いた時間で美姫に会いに行こうと企んでいた峯岸に零が意味深に声をかけた。


「峯岸…今日はもう帰っていい。お前も楽しんでこい」


ご機嫌な零は、仕事から解放してくれるらしい。


「…気を使うなんてあなたらしくもない。ですが、お言葉に甘えて帰らさせて頂きます」


零が言う楽しんで来いには程遠い、難攻不落な相手。


駆け引きを一歩間違えれば、二度と会うことも許されないだろう。


「あぁ…お互い苦労するな」


お互い初めて本気になった女を振り向かせる方法は違うが、必死なのは一緒だった。


奴なりの励ましの言葉に、フッと笑みがでる。


さぁ、美姫から逃げた罰を受けに行ってこよう…


社用車を運転する峯岸は、美姫のアパートに向かった。
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