ア ヤ カ シ 屋 敷

壹

ガタッ

物音で、私は目が覚めた。布団から起き、カーテンを開けた。雨が降っていたが、構わず窓も開けた。
ぽた　ぽた・・・
部屋の中に水が入ってくる。私はそれを手ですくって、ビンの中に入れた。
私は学校一頭がいい。来年は受験もするし、今は鬼のように勉強をしている。
そんな日常の中で、今クラスでは、「あやかし屋敷」というのが話題になっている。
もちろん私はそんなの信じない。信じる暇もない。
勉強熱心な私が、そんな馬鹿みたいな話に乗るわけがなかった。


ガラガラ

ドアを開け、私は教室に入った。
「おはよう。」
私は小さな声でそう言い、席に座った。
「ねえねえ!香澄美ちゃん」
突然、となりの席の中川エリが話しかけてきた。
「なに？私いま忙しいから短めにね。」
そう言うと、エリはニコニコしながら話を始めた。
「香澄美ちゃん、「あやかし屋敷」の話、知ってるでしょ？」
私はあきれた。女子もこんな話を話題にして楽しんでいるなんて・・・。
「知ってるわ。それがどうかしたの？」
「今度クラスでね、行こうかって話になって・・・、香澄美ちゃんもどうかなって・・。」
私は、断るつもりだった。しかし、
「そうだよ。香澄美も来いって。」
勇輝も、声をかけてきた。
実は、私は勇輝のことが好きなのだ。好きな人のいうことだから、断るにも断れず、黙りこんでしまった。
「ねっ！香澄美ちゃんも行こー！」
私はもうどうしようもなかった。
「うん・・・。」
どうすればいいのかわからなくなり、うなずいてしまった。
「やったー！じゃ、明日の午前１０時から、午後９時までね！お弁当も持ってきてね」
私はまたコクリと、うなずいた。もう今さら断るなんてできないからだ。
一日でも多く勉強をするよう、母に言われてきた。だが、明日は母も父も旅行に行っていていない。
明日だけ・・、明日だけ・・・。
そう思いながら、私は眠りについた。