王子様の溺愛【完】※番外編更新中
数日後の日曜日の朝。いよいよ葵葉高校の文化祭の日を迎えた。

「おはようございます」

縁を迎えに佐藤家に向かうと、縁は満面の笑みで依人を出迎えてくれた。

「おはよう、縁」

縁はブラウスとニットを重ね着にさせ、膝より短い丈のスカートを身に付けていた。ベレー帽は小顔の縁によく似合っている。
すらりとした白い足は目の遣り場に困る。くすぐったらどう反応するのか……不意に湧いて出た良からぬ妄想を必死に掻き消した。

「その服、似合ってて可愛い」

翻弄した仕返しに、膝を少し折って縁の耳元で囁いた。縁は照れたのか頬を染め、ニットの裾を両手で握り締めている。

「不意打ちです……」

平均的な背丈の縁は、依人の顔を見ると自ずと上目遣いになる。

縁の一挙一動は、いつだって依人を惹き付けていく。
それ故に、ずっと傍にいて欲しいと願わずにはいられないのだ。

「縁は、チケットをくれた人と仲が良いの?」
「はい。母方の従兄弟なんですっ」

縁の返事に、依人は拍子抜けした。
てっきり、小学校か中学校が同じの男友達だと思っていたのだ。

「先輩と同じ三年生で、医学部目指して頑張っています」

(よかった……親戚か……)

ライバル視してガンとばす真似をすれば、その従兄弟に失礼な男と印象付けられ、縁と別れさせられることになるだろう。

「もし会えたら挨拶してもいい?」
「はい、是非っ。従兄弟も先輩に会いたいって言っていたので」

縁の言葉から、従兄弟はシスコン属性だろうと察した(兄妹ではないが)。
依人は縁に気付かれぬように気を引き締めた。

「先輩、そろそろ行きましょうか」
「そうだね」

二人はどちらともなく指を絡ませて手を繋いだ。
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