王子様の溺愛【完】※番外編更新中
「お昼ご飯にしようか」


しばらく勉強に集中していたが、正午に差し掛かった頃、依人の一言で中断した。


「何か店屋物でも頼む?」


(先輩って自炊はあまりしないのかな?)


これまで何度か一緒に昼食を摂ってきたが、依人の食事は購買かコンビニで買ってきたパンやおにぎりばかりだった。


(そんな食生活だと体調崩すよ……!)


キッチンを借りて何か作ってあげたくなったが、今から作れば食べるのが遅くなるし、初訪問で借りるのは図々しい気がして、結局一緒に店屋物のメニューを選んだ。


縁はざるそば、依人は親子丼を注文した。


「先輩って店屋物をよく利用するんですか?」


食事中、縁は思い切って依人に疑問をぶつけると、依人は気恥しそうに肩をすくめた。


「まあね。料理が下手でね、何作っても焦がしてしまうんだ」


(意外……)


文武両道で生徒会の仕事を完璧にこなす依人だが、不器用な一面があった事実に、縁は目を丸くさせた。


「こんな俺、がっかりした?」

「それはないですっ」


縁は即答した。


「正直びっくりしました……でも、嬉しい。先輩のことが知れて」


真っ直ぐな視線を向けて自分の気持ちを言葉にすると、依人は一瞬目を見張ったが、頬が緩み、表情を綻ばせた。


「縁は俺を喜ばせるのが上手だよ」

「そうですか……?」

「これ以上……」


依人は小さな声で独りごちたが、大半は縁の耳に届くことはなかった。
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