王子様の溺愛【完】※番外編更新中
依人の逞しい腕が、縁の華奢な身体を力強く包み込んで離さない。
「先輩っ、」
いつもの壊れ物を扱うような優しい抱き締め方とは違い、息苦しさを感じるほど強いが、心地いいと思える。
「もうだめ……大事にしたいのに、優しくしたいのに、日に日に余裕がなくなる」
切羽詰まった声音で話す依人の表情は、優しくて穏やかな王子様とは違う一人の男の顔をしていた。
「縁が俺の告白を受け入れてくれただけでも幸せだったのに、どんどん欲張りになるんだ……」
(それって先輩もあたしと同じ気持ちでいてくれているってことなの……?)
自惚れるな、と心の中で言い聞かせても、“嬉しい”感情が溢れ出す。
「幸せなんて、勘違いしちゃいます……」
声が震えてしまう。
「勘違いしてもいいよ。俺は縁が思っている以上に、縁のことが好きだから」
耳元で愛おしそうに囁かれて、縁の涙腺は少しずつ緩んでいった。
「あたしも、大好きです……遊ばれてもいいって思っていたけど、本当は先輩の特別になりたくて仕方ないです……っ」
縁の瞳から大粒の涙がポロポロと零れ落ちた。
「ばか。遊びなわけないよ。縁は初めて会った頃から俺の特別な存在だよ」
依人は縁の顎を上げると、ゆっくりと唇を重ね合わせていった。
「んっ」
縁にとって初めてのキス。
(今、先輩とキスしてる……)
縁が息苦しそうになると唇が離れ、一呼吸するとまた塞がれる。
何度も繰り返されていった。
打ち上げられた花火など耳に入っていないかのように、二人だけの世界に浸っていた。
触れるだけの口付けだが、縁の身体を甘く痺れさせるには充分な威力だった。
依人は、腰が砕けふにゃふにゃと崩れそうな縁を優しく抱き留めた。
「ごめん……大事にしたいのに、我慢がきかない男で」
「もう、我慢しなくていいですよ? ――あ、あたしにとって先輩のキスはご褒美ですから……」
照れながら独り言のように呟くと、依人は頬を赤く染め、目を大きく見張っていた。
「反則だって」
依人の独り言は打ち上げ花火の爆音に掻き消されていった。
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「先輩っ、」
いつもの壊れ物を扱うような優しい抱き締め方とは違い、息苦しさを感じるほど強いが、心地いいと思える。
「もうだめ……大事にしたいのに、優しくしたいのに、日に日に余裕がなくなる」
切羽詰まった声音で話す依人の表情は、優しくて穏やかな王子様とは違う一人の男の顔をしていた。
「縁が俺の告白を受け入れてくれただけでも幸せだったのに、どんどん欲張りになるんだ……」
(それって先輩もあたしと同じ気持ちでいてくれているってことなの……?)
自惚れるな、と心の中で言い聞かせても、“嬉しい”感情が溢れ出す。
「幸せなんて、勘違いしちゃいます……」
声が震えてしまう。
「勘違いしてもいいよ。俺は縁が思っている以上に、縁のことが好きだから」
耳元で愛おしそうに囁かれて、縁の涙腺は少しずつ緩んでいった。
「あたしも、大好きです……遊ばれてもいいって思っていたけど、本当は先輩の特別になりたくて仕方ないです……っ」
縁の瞳から大粒の涙がポロポロと零れ落ちた。
「ばか。遊びなわけないよ。縁は初めて会った頃から俺の特別な存在だよ」
依人は縁の顎を上げると、ゆっくりと唇を重ね合わせていった。
「んっ」
縁にとって初めてのキス。
(今、先輩とキスしてる……)
縁が息苦しそうになると唇が離れ、一呼吸するとまた塞がれる。
何度も繰り返されていった。
打ち上げられた花火など耳に入っていないかのように、二人だけの世界に浸っていた。
触れるだけの口付けだが、縁の身体を甘く痺れさせるには充分な威力だった。
依人は、腰が砕けふにゃふにゃと崩れそうな縁を優しく抱き留めた。
「ごめん……大事にしたいのに、我慢がきかない男で」
「もう、我慢しなくていいですよ? ――あ、あたしにとって先輩のキスはご褒美ですから……」
照れながら独り言のように呟くと、依人は頬を赤く染め、目を大きく見張っていた。
「反則だって」
依人の独り言は打ち上げ花火の爆音に掻き消されていった。
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