王子様の溺愛【完】※番外編更新中
「そんなに変わっていませんし、可愛くはないですよ……っ」


振り向くと依人に抗議をする。


(心臓に悪いよ!)


お世辞か、彼氏の贔屓目と言うものか。
どちらにしろ、依人に言われるとドキドキして、縁は動揺を隠せずにいた。


「縁は相変わらずだね」


依人は眉を下げて困った風に笑う。


「え……」


振り返り、どういう意味だろうと首を傾げていると、依人はすかさず縁の唇に口付けを落とした。


「ん……」


唇が長いこと重なり合って、それが縁の鼓動を逸らせていく。


突然の口付けに驚いてしまったが、次第に甘い空気に酔いしれて、いつの間にか依人の手をぎゅっと握ったまま受け入れていた。


(なんだろう、この感覚……頭がぼーってなっちゃう。でも、嫌じゃない。むしろ溺れていたい)


もうすっかり縁は依人のキスの虜になっていた。
依存症と言っても過言ではない。


(だいすき……です)


縁はされるがままに何度も口付けに溺れていた。


しばらくすると身体の力が抜け落ちて、縁はヘナヘナと絨毯の上に崩れ落ちてしまった。


「腰抜かしちゃった?」


手を差し伸べる依人は、王子様のような甘い微笑を浮かべている。


「……っ」


縁は真っ赤な顔をさせたままこくんと無言で頷くと、依人の手を握り起こして貰った。


「よく頑張ったね」


依人は、茹でだこ状態の縁を優しく抱き締めると、小さな子どもを褒めるように頭を撫でた。


(もう重症です。医者が匙を投げ出すくらい、先輩のこと好き過ぎて仕方ないです)


胸の奥がきゅうっと切なく締め付けられ、縁は益々依人への想いが大きくなっていくのを実感した。


「先輩が、大好きです……」


赤い顔を隠すように依人の胸に顔を埋めると、震えそうな声で想いを呟く。


「俺も縁が大好きだよ……誰よりもね」


依人は内緒話をするようにウィスパーボイスで囁いた。


「っ!」


その囁きは甘過ぎて、縁の心臓を壊すには充分な代物だった。
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