王子様の溺愛【完】※番外編更新中
十五分後。ようやく店員に席を案内されて、腰を降ろすことが出来た。
「寒かったね」
「はい、やっと生き返りました」
外の凍える寒さで感覚を失いかけた指先は、店内で焚かれているレトロな石油ストーブの暖かさのお陰でで血が通い出したような気がした。
二人はメニューを広げて、何を食べようかと眺める。
「あたしはきのこドリアにします」
「俺も決まったから、店員さん呼ぶね」
依人は店員を呼んで、縁のきのこドリアと自分が食べるガレットを頼んだ。
「自動車学校どうですか?」
食事をしながら縁は依人に問いかけた。
「まだ仮免許が取れていないから、今は校内のコースしか走れないんだけど、最初よりはだいぶ慣れたよ」
縁達の通う高校は、進路が決まって初めて自動車学校に通うことが許される。十六歳から取得出来る原付や自動二輪も進路が決まらないと通うことが出来ない。
依人も大学進学が決まってすぐに通い出したのだ。
(先輩が大人になっていく。大学生って未成年でもお酒を飲む機会が出てくるんでしょ? なんだか、置いてきぼり食らったみたい……なんて自己中なんだろ、あたし)
表は笑顔で話に耳を傾けていたが、心の中で自分勝手な考えをした自身に突っ込みをいれた。
「あれ……桜宮くん?」
お喋りに花を咲かせていた二人の元に、一人の女の子が近付いてきた。
二人はその声のする方へ顔を向けたが、縁は彼女の顔を目にした途端、驚きのあまり見張った。
(え、すっごい美人さん!)
綺麗に染められた長い茶髪をハーフアップにし、メイクも上品に施されているが、素顔も美人だと思わせるほど整った造形をしている。
肩出しのニットを着ているのだが、彼女が着ると下品には見えず雑誌から抜け出したモデルのように色っぽかった。
「あの」
依人は「誰ですか?」と言いたげに、躊躇いがちに首を傾げると、彼女は目を細めて破顔した。
「ふふ。やだ、ちょっと変わったくらいで元カノの顔、忘れちゃったの? 高梨弥生(たかなし やよい)だよ」
(先輩の元カノ……)
元カノと判明した瞬間、縁は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。
「久しぶり。高梨さん。中学の卒業式以来だね。あの頃と見た目が違うからすぐに気付かなかったよ」
「思い出してくれてよかったぁ。あ、この子もしかして桜宮くんの彼女?」
弥生はちらりと縁に視線を向けた。
「そうだよ。佐藤縁さん。同じ学校の後輩で、七月から付き合っている」
「はじめまして。佐藤……縁です」
(うざいと思われるのが怖くて聞けなかったけど、やっぱり先輩は過去に付き合っていた人がいたのね)
胸の中にもやもやが出てくるのを自覚しながらも、縁は弥生に挨拶をした。
「寒かったね」
「はい、やっと生き返りました」
外の凍える寒さで感覚を失いかけた指先は、店内で焚かれているレトロな石油ストーブの暖かさのお陰でで血が通い出したような気がした。
二人はメニューを広げて、何を食べようかと眺める。
「あたしはきのこドリアにします」
「俺も決まったから、店員さん呼ぶね」
依人は店員を呼んで、縁のきのこドリアと自分が食べるガレットを頼んだ。
「自動車学校どうですか?」
食事をしながら縁は依人に問いかけた。
「まだ仮免許が取れていないから、今は校内のコースしか走れないんだけど、最初よりはだいぶ慣れたよ」
縁達の通う高校は、進路が決まって初めて自動車学校に通うことが許される。十六歳から取得出来る原付や自動二輪も進路が決まらないと通うことが出来ない。
依人も大学進学が決まってすぐに通い出したのだ。
(先輩が大人になっていく。大学生って未成年でもお酒を飲む機会が出てくるんでしょ? なんだか、置いてきぼり食らったみたい……なんて自己中なんだろ、あたし)
表は笑顔で話に耳を傾けていたが、心の中で自分勝手な考えをした自身に突っ込みをいれた。
「あれ……桜宮くん?」
お喋りに花を咲かせていた二人の元に、一人の女の子が近付いてきた。
二人はその声のする方へ顔を向けたが、縁は彼女の顔を目にした途端、驚きのあまり見張った。
(え、すっごい美人さん!)
綺麗に染められた長い茶髪をハーフアップにし、メイクも上品に施されているが、素顔も美人だと思わせるほど整った造形をしている。
肩出しのニットを着ているのだが、彼女が着ると下品には見えず雑誌から抜け出したモデルのように色っぽかった。
「あの」
依人は「誰ですか?」と言いたげに、躊躇いがちに首を傾げると、彼女は目を細めて破顔した。
「ふふ。やだ、ちょっと変わったくらいで元カノの顔、忘れちゃったの? 高梨弥生(たかなし やよい)だよ」
(先輩の元カノ……)
元カノと判明した瞬間、縁は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。
「久しぶり。高梨さん。中学の卒業式以来だね。あの頃と見た目が違うからすぐに気付かなかったよ」
「思い出してくれてよかったぁ。あ、この子もしかして桜宮くんの彼女?」
弥生はちらりと縁に視線を向けた。
「そうだよ。佐藤縁さん。同じ学校の後輩で、七月から付き合っている」
「はじめまして。佐藤……縁です」
(うざいと思われるのが怖くて聞けなかったけど、やっぱり先輩は過去に付き合っていた人がいたのね)
胸の中にもやもやが出てくるのを自覚しながらも、縁は弥生に挨拶をした。