王子様の溺愛【完】※番外編更新中
「どこか行きたいところはある?」
この問いに対して返ってくる縁の答えは、八割方書店だ。
おそらく書店と返ってくるだろうと思いながら返事を待っていると、縁は真っ赤な顔をさせて依人のコートの袖をきゅっと握り締めながら口を開いた。
「先輩のお家にいってもいいですか……?」
上目遣いでそんなことを言う縁を目の当たりにした時、依人の意識は遥か彼方へ飛んで行った。
「……まだ時間はあるけど、俺の家でいいの?」
無理矢理飛んだ意識を呼び戻し、平静を装って聞きかえすと、縁は瞼をきつく閉じて。
「はい……あたし、先輩と二人きりに、なりたいです……」
不意打ちの大胆な発言に、依人の心臓は撃ち抜かれた。
(俺は耐えられるんだろうか……我慢はするけど)
「いいよ」
依人は自分の理性が持ち堪えられるのか、一抹の不安を感じたが、可愛いお姫様のお願いを聞いてあげたい気持ちが強くて頷いた。
そのまま、来た道を戻るように電車に乗って依人の自宅のマンションへ向かった。
「お邪魔します」
依人の後に続いて、縁も玄関に上がり込む。
「飲み物用意するから先に部屋に行って待ってて?」
「は、はい」
頭を撫でながら言うと、縁は上擦りそうな声でこくんと頷いて、依人の部屋へ向かってとことこと廊下を歩いて行った。
縁を自室へ行かせた後、キッチンで縁用の甘めのカフェオレと、自分用のブラックコーヒーを淹れる。
「お菓子は……ないか」
強いて言うなら激辛のポテトチップスが一袋あるのだが、縁は辛すぎるものも苦手なので即却下した。
仕方ないか、とお盆に二つのマグカップを乗せて、自室へ持って行った。
部屋に入ると、縁はガラステーブルの前で正座をしていた。
「足崩していいよ」
依人は縁の前にカフェオレを置いた。
「ありがとうございます」
言われるがままに足を崩しながらふんわりと破顔する縁に、依人の胸の中で愛おしさが溢れ出した。
依人も縁の隣で腰を下ろすと、縁は同時に鞄の横に並んでいた淡いピンクの袋を手に取り、
「今日はバレンタインなので作ってきました……受け取ってくれますか?」
と依人に差し出した。
突然のことに依人はびっくりして一瞬目を丸くさせたが、次第に驚きより嬉しさが勝り、笑みが零れ落ちた。
「ありがとう。何作ってくれたの?」
「ブラウニーにしましたっ。甘さは抑えたので多分食べられると思います」
「縁が作るものはなんでも嬉しいよ。早速食べていい?」
「はいっ」
真紅のリボンを解き、袋から一切れのブラウニーを取り出しすと、一口口に入れた。
この問いに対して返ってくる縁の答えは、八割方書店だ。
おそらく書店と返ってくるだろうと思いながら返事を待っていると、縁は真っ赤な顔をさせて依人のコートの袖をきゅっと握り締めながら口を開いた。
「先輩のお家にいってもいいですか……?」
上目遣いでそんなことを言う縁を目の当たりにした時、依人の意識は遥か彼方へ飛んで行った。
「……まだ時間はあるけど、俺の家でいいの?」
無理矢理飛んだ意識を呼び戻し、平静を装って聞きかえすと、縁は瞼をきつく閉じて。
「はい……あたし、先輩と二人きりに、なりたいです……」
不意打ちの大胆な発言に、依人の心臓は撃ち抜かれた。
(俺は耐えられるんだろうか……我慢はするけど)
「いいよ」
依人は自分の理性が持ち堪えられるのか、一抹の不安を感じたが、可愛いお姫様のお願いを聞いてあげたい気持ちが強くて頷いた。
そのまま、来た道を戻るように電車に乗って依人の自宅のマンションへ向かった。
「お邪魔します」
依人の後に続いて、縁も玄関に上がり込む。
「飲み物用意するから先に部屋に行って待ってて?」
「は、はい」
頭を撫でながら言うと、縁は上擦りそうな声でこくんと頷いて、依人の部屋へ向かってとことこと廊下を歩いて行った。
縁を自室へ行かせた後、キッチンで縁用の甘めのカフェオレと、自分用のブラックコーヒーを淹れる。
「お菓子は……ないか」
強いて言うなら激辛のポテトチップスが一袋あるのだが、縁は辛すぎるものも苦手なので即却下した。
仕方ないか、とお盆に二つのマグカップを乗せて、自室へ持って行った。
部屋に入ると、縁はガラステーブルの前で正座をしていた。
「足崩していいよ」
依人は縁の前にカフェオレを置いた。
「ありがとうございます」
言われるがままに足を崩しながらふんわりと破顔する縁に、依人の胸の中で愛おしさが溢れ出した。
依人も縁の隣で腰を下ろすと、縁は同時に鞄の横に並んでいた淡いピンクの袋を手に取り、
「今日はバレンタインなので作ってきました……受け取ってくれますか?」
と依人に差し出した。
突然のことに依人はびっくりして一瞬目を丸くさせたが、次第に驚きより嬉しさが勝り、笑みが零れ落ちた。
「ありがとう。何作ってくれたの?」
「ブラウニーにしましたっ。甘さは抑えたので多分食べられると思います」
「縁が作るものはなんでも嬉しいよ。早速食べていい?」
「はいっ」
真紅のリボンを解き、袋から一切れのブラウニーを取り出しすと、一口口に入れた。