王子様の溺愛【完】※番外編更新中
(ありがとう。あたし、ここに来て良かったって心から思えるよ)
始めは絶望していた札幌での生活。
しかし、友達に恵まれて、今となっては縁にとって愛おしくて幸せな二年間だった。
「ただいま」
ドアを開けて玄関を開けたが、誰も返す者はいなかった。
(お母さん、二泊旭川に出張だもんね……)
今暮らしている家は隣家とは五十メートル以上離れており、母がいなければ怖いくらい静かだ。
「荷物まとめようっと」
縁は二階にある自室へ向かい、数日前に最寄りのスーパーでもらってきたダンボールに必要な荷物を詰めた。
しかし、前住んでいた家に大体はそろっているので、荷物の整理もすぐに終わってしまった。
午後三時前。夕飯の準備をするにはまだ早いので、縁はベッドの上に座って、スマートフォンを操作してアルバムのアプリを開いた。
「ふふ、写真、撮りすぎ」
札幌に来てからの写真を眺めながら、くすくすと笑いを零す。
縁は懐かしみつつ、どんどんさかのぼっていった。
「あ……」
二年前の五月までさかのぼると、縁は一枚の写真に目が留まる。
それは球技大会のもので、体育館で体操服姿でスリーポイントをしようとしている依人の姿だった。
(これって、こっそり撮ったものだっけ……)
この頃はまだ遠くから見つめるだけで精一杯だった。
まさか、一時間もたたぬうちに接点が出来て、後に付き合うようになるなど当時は夢にも思わなかった。
付き合い始めはからかわれていると思っていた時期もあったが、依人も自分と同じ気持ちだと知った時は、泣いてしまうほど嬉しかったのを今でも縁は覚えている。
「写真を見たらもっと会いたくなっちゃったよ……」
縁は依人の写真を表示したままスマートフォンを胸に抱き締めて、瞼をそっと閉じると、依人に思いをはせた。
「……ん」
目を開けると辺りはもうすっかり暗くなっていた。
ススマートフォンの画面を見ると、 二時間ほど眠っていたのだと気付き、慌ててベッドから降りて部屋を出る。
「ご飯、作らなきゃ。野菜はお裾分けで沢山あるから……」
階段を降りて、冷蔵庫に残っている食材を思い起こしながらキッチンへ向かっていると、インターホンが鳴り響いた。
(宅配便かな?)
母が今朝に言った“卒業祝い”を思い出しながら、縁は受話器を手に取った。
「はい――――」
「あの……」
相手の声が耳に入った瞬間、縁は心臓が止まりそうになるほど驚かされた。
動揺のあまり、受話器を派手に落としてしまったが、縁はそれを戻そうとはせず玄関へ一目散に駆け出した。
ドアを開けて、目の前の視界に映る人物に抱き着く。
二十センチ以上高い背丈、爽やかそうなショートの黒髪、綺麗な二重瞼の優しくて甘い瞳。
縁の元へ現れたのは、宅配のおじさんではなく、会いたくて仕方がなかった依人だったのだから。
「先輩……せんぱい……っ」
何度も呼びながら離さないと言わんばかりに力強く抱き締める。
依人は抱き着いたまま泣きじゃくる縁の背中に腕を回し、
「卒業おめでとう。縁」
と優しい笑顔で囁いた。
始めは絶望していた札幌での生活。
しかし、友達に恵まれて、今となっては縁にとって愛おしくて幸せな二年間だった。
「ただいま」
ドアを開けて玄関を開けたが、誰も返す者はいなかった。
(お母さん、二泊旭川に出張だもんね……)
今暮らしている家は隣家とは五十メートル以上離れており、母がいなければ怖いくらい静かだ。
「荷物まとめようっと」
縁は二階にある自室へ向かい、数日前に最寄りのスーパーでもらってきたダンボールに必要な荷物を詰めた。
しかし、前住んでいた家に大体はそろっているので、荷物の整理もすぐに終わってしまった。
午後三時前。夕飯の準備をするにはまだ早いので、縁はベッドの上に座って、スマートフォンを操作してアルバムのアプリを開いた。
「ふふ、写真、撮りすぎ」
札幌に来てからの写真を眺めながら、くすくすと笑いを零す。
縁は懐かしみつつ、どんどんさかのぼっていった。
「あ……」
二年前の五月までさかのぼると、縁は一枚の写真に目が留まる。
それは球技大会のもので、体育館で体操服姿でスリーポイントをしようとしている依人の姿だった。
(これって、こっそり撮ったものだっけ……)
この頃はまだ遠くから見つめるだけで精一杯だった。
まさか、一時間もたたぬうちに接点が出来て、後に付き合うようになるなど当時は夢にも思わなかった。
付き合い始めはからかわれていると思っていた時期もあったが、依人も自分と同じ気持ちだと知った時は、泣いてしまうほど嬉しかったのを今でも縁は覚えている。
「写真を見たらもっと会いたくなっちゃったよ……」
縁は依人の写真を表示したままスマートフォンを胸に抱き締めて、瞼をそっと閉じると、依人に思いをはせた。
「……ん」
目を開けると辺りはもうすっかり暗くなっていた。
ススマートフォンの画面を見ると、 二時間ほど眠っていたのだと気付き、慌ててベッドから降りて部屋を出る。
「ご飯、作らなきゃ。野菜はお裾分けで沢山あるから……」
階段を降りて、冷蔵庫に残っている食材を思い起こしながらキッチンへ向かっていると、インターホンが鳴り響いた。
(宅配便かな?)
母が今朝に言った“卒業祝い”を思い出しながら、縁は受話器を手に取った。
「はい――――」
「あの……」
相手の声が耳に入った瞬間、縁は心臓が止まりそうになるほど驚かされた。
動揺のあまり、受話器を派手に落としてしまったが、縁はそれを戻そうとはせず玄関へ一目散に駆け出した。
ドアを開けて、目の前の視界に映る人物に抱き着く。
二十センチ以上高い背丈、爽やかそうなショートの黒髪、綺麗な二重瞼の優しくて甘い瞳。
縁の元へ現れたのは、宅配のおじさんではなく、会いたくて仕方がなかった依人だったのだから。
「先輩……せんぱい……っ」
何度も呼びながら離さないと言わんばかりに力強く抱き締める。
依人は抱き着いたまま泣きじゃくる縁の背中に腕を回し、
「卒業おめでとう。縁」
と優しい笑顔で囁いた。