王子様の溺愛【完】※番外編更新中
依人の自宅であるマンションは縁の自宅と学校の中間にある。


まるでホテルのようなおしゃれな外観のタワーマンションだ。ぼーっと見とれていると、「行こうか」と依人に手を引かれた。


依人の住む部屋は十五階にあった。


「お邪魔します……」


靴を揃えて中に上がるが、依人以外の住人はいなかった。


「ご両親は……」

「仕事で忙しいから、たまにしか帰って来ないよ。ほぼ一人暮らしみたいなもの」

「大変ですね」

「掃除と洗濯は通いのお手伝いさん任せだからそうでもないよ」


依人はなんてことないよ、と笑った。


「奥のドアが俺の部屋だから適当に座ってて? お茶用意してくるよ」

「お手伝いしましょうか?」

「大丈夫。ゆっくりしてて」

「すみません」


縁は言葉に甘えて先に依人の自室へ向かった。


「失礼します」


そっとドアを開けると、広い空間が広がった。


部屋は十畳以上はあり、セミダブルのベッドとガラスのローテーブル、本棚、クローゼットが配置されている。
物が少ないせいで余計に広く見える。


縁はどこに座ろうかきょろきょりと辺りを見渡し、ひとまずローテーブルの前に正座をした。


(男の人の部屋に入るの、初めてだよ……)


縁はドキドキしながら、また辺りを見渡す。


あらかじめエアコンを入れたのか室内は涼しかったが、頬はずっと熱いままだ。


(先輩は今までの彼女とここで過ごしたりしたのかな……?)


ふと、依人の過去が気になってしまい、胸の中がモヤモヤした。
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